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カテゴリ:第4話 住職と捕虜の話( 1 )   

第4話 「住職」柱松大尉と、捕虜になった5人の若者   

 
 昭和15年2月頃から、特務機関は淮南に出張所を置く事になり、私も初めて現地班を体験した。

 淮南地区警備隊長だった柱松大尉は僧侶で、東北地方の寺の住職だった。彼は無益な殺生を嫌い、捕虜は2~3日留置したあと、

「二度と兵隊になるな。故郷に帰って百姓をしろ」

と言い聞かせては釈放していた。

 昭和16年頃だったろうか、四川省出身の若い兵士5人が日本軍の捕虜になった。四川省の強い訛りを話す彼らは、中国軍の仲間からも田舎者だといじめられ、5人だけで行動していたところ捕虜になったらしい。しかし、郷里があまりにも遠すぎて、帰す訳にもいかない。

 そこで我々の特務機関で面倒を見てくれないかと、柱松大尉から頼まれた。守衛に雇ったが、彼らは呑気な若者達で、僅かな小遣いを貰うと博打を打ちに行く。残飯で鶏を飼い、小遣いを稼いだりもしていた。

 やがて私は転勤になったので彼等のその後はわからない。

 後年パンダで有名になった四川省に、はるばる帰る事が出来ただろうか。
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by 1937-1945 | 2007-08-16 14:18 | 第4話 住職と捕虜の話